将棋の囲いでもっとも強い穴熊ですが、「穴熊は筋が悪くなる」とか「穴熊は強くならない」などと言われており、初心者には穴熊をおすすめしないという指導者が多いです。
しかしぼくは初心者こそ穴熊を指すべきだと考えています。今回はその理由について解説していこうと思います。
初心者こそ終盤に強い穴熊を生かしやすい
まずは穴熊という囲いの特徴をまとめてみます。

- 囲いを完成させるまでに手数がかかる
- 王手がかけられにくく、囲いが残っていれば絶対に詰まない
- 他の囲いと比べて堅く遠いので互角の戦力で攻めあえば勝てる
- 端攻めに弱い
王手がかけられにくくて絶対に詰まないというのは終盤で絶大的な強みとなるので穴熊という囲いは終盤に強さを発揮すると言えます。
初心者同士の将棋だと序盤で一方的に攻められて形勢に差がつくことはよくあることですが、受け潰しをされて終盤の攻め合いにすらならないということは稀だと思います。
初心者だと丁寧に受け潰すという技術は難しく、攻め切ろうと考える人が多いからです。
なので初心者こそ終盤で穴熊の強さを生かしやすいのです。
穴熊に囲っているうちは悪手を指しにくい
将棋において玉を固めるという手は悪手になりにくく、穴熊は特に囲う手が悪手になりにくい傾向があります。
わかりやすくするため、実際の局面を用いて解説をしていきます。

上図の局面は先手に▲9五歩と指された局面です。ここは穴熊を半分完成させる△8二銀が良い一手です。その後更に駒組みを進めます。
上図から△8二銀▲7七角△5二金▲8八玉△7一金(下図)

後手はこの数手の間穴熊の囲いを固めていただけですが、悪手と呼べる手は指していません。
穴熊は完成までに手数のかかる囲いですが、裏を返せば長い手数分悪手を指しにくいというメリットがあります。
逆に手数をあまりかけずに囲うことができる美濃囲いをみてみましょう。

後手はこの局面で△6四歩~△7四歩~△6三金と高美濃囲いを目指してより囲いを強化するのか、美濃囲いのまま攻めを狙うこともでき、色々な指し方があります。
ただ、指す手が広いというのは初心者にとってはミスをしやすい展開ともいえるので、避けたいものです。
こうして考えると穴熊は金銀を寄せて囲いを完成させるという分かりやすい方針があり、序盤の悪手率を下げることができる良い指し方といえます。
穴熊は同じ展開になりやすいから上達が早い
穴熊は囲いの特性上受けのパターンが限られていて、同じ展開になりやすいです。一例として以下の局面を見てみましょう。

先手の穴熊が攻められている展開です。ここから後手の手番で以下のように進みます。
上図から△7九と▲同金△同馬▲同銀△同竜(下図)

この局面は△8八銀の詰めろのため何か受ける必要があるのですが、▲8八金は△7七銀といううまい手筋で必死がかかってしまいます。
そのため▲8八銀か▲8八角と竜取りに駒を打って受けるのが正解です。
・・・という正解の手が何かというのはどうでもいいのですが、実はこの例は穴熊を指していれば何回も経験する展開で、穴熊党は読まなくても受けの手が出てくるレベルです。
穴熊という囲いは攻められるパターンが他の囲いと比べて限られているので似たような攻めの展開を何回も経験できます。
似たような展開を繰り返すというのは初心者にとっては良いことで、経験→反省→経験→反省という上達への近道のサイクルを実感することができます。
中には毎回似たような展開になることを嫌う人もいるかもしれませんが、初心者が嫌うべきは自分の経験したことのない展開にしてしまうことです。
その点で穴熊は似た展開にできて優秀な囲いといえます。

まとめ
- 穴熊は終盤に強く、初心者であれば終盤を迎える可能性が高いから初心者こそ穴熊の強みを発揮しやすい
- 玉を固める手は悪手になりにくい=穴熊は悪手を指しにくい
- 穴熊は同じ展開になりやすいため、反省を生かしやすく上達も早い
