初心者が振り飛車を指すべき理由と居飛車を指すべきではない理由
将棋の戦法を大きく分けると居飛車と振り飛車の2つとなりますが、初心者は振り飛車をやるほうが効率が良いです。
- 振り飛車は居飛車に比べて覚えることが圧倒的に少ない
- 振り飛車は美濃囲いだけ覚えておくだけで良い
- 定跡書が充実しているため序盤も覚えやすい
- 同じパターンの展開になりやすいので上達が早い
こんな感じです。振り飛車はとにかく同じパターンになりやすいというのが良いのです。
将棋の上達のサイクルは、研究→実戦→反省→研究・・・と繰り返すことなので、研究したことを実戦で再現しやすいということは重要です。
逆に居飛車は覚えることが多く、上達のサイクルがうまくできないため初心者におすすめができないです。その理由を実際の対局の例で紹介しましょう。

これは居飛車でよく登場する横歩取りという戦法です。後手番では△3三角という手がプロで1番多く指されています。先手も当然そう指されると思っていましたが・・・。
上図より△8八角成▲同銀△2八歩▲同銀△4五角

この手順は横歩取り4五角戦法と言われる奇襲戦法です。昔はプロの棋戦でも指されることがありましたが、ちゃんと対応すれば先手良しのためプロでは指されなくなりました。
しかしさっきの局面で△3三角以降の局面しか研究していなかったため、あっさりと負けてしまいます。そして正しい対応法を研究して次の実戦に備えます。
でもこの4五角戦法はかなりレアなので研究したからといってすぐに実戦で遭遇することはありません。研究した内容を忘れた頃に遭遇するレベルです。
実戦で反省したことを次の実戦で再現できて初めて自分の力になります。その再現がしづらい居飛車より再現しやすい振り飛車が初心者には最適なのです。
振り飛車党なら終盤を鍛えられる
アマチュアは将棋の勉強にかけられる時間が限られています。なので勉強時間の配分をどうするかというのも意外と重要なのです。
将棋は逆転のゲームと言われるくらい終盤で逆転することが多いので、終盤力は勝敗に大きく影響します。ぼくは初段になるまで序中盤と終盤の勉強時間を2:8の割合にしてもいいくらい良いのではないかと考えています。
しかし居飛車を指すならば最低限覚えておかないといけない定跡が多く、序盤の勉強もしておかないといけないです。
振り飛車党なら居飛車党が序盤の勉強をしている時間を終盤の勉強に時間をまわすことができるので、同じ時間をかけて初段を目指すなら振り飛車党のほうが終盤力が高くなります。
そして振り飛車は序盤からいきなり必敗になることが少ないです。居飛車は横歩取りや角換わり腰掛銀など、定跡を知らないと一瞬で負けになります。
そういう意味では同じ対局数でも振り飛車のほうが終盤を迎えやすいので、その分終盤の経験値も増やせるのじゃないかと思います。
おすすめはノーマル三間飛車
振り飛車といってもたくさん種類があります。その中でもおすすめなのはノーマル三間飛車です。

ノーマル三間飛車は四間飛車と比べると石田流という形に組み上げることができるという作戦的分かりやすさをもっています。

石田流は攻めの左桂を跳ねているので攻撃力が高く、かつ相手の2九の桂の動きを封じているので振り飛車の理想形と言われています。
定跡書も多く、プロでもそれなりに指されているので序盤の勉強に困ることはないでしょう。
ノーマル三間飛車は先手番後手番どちらでも指せるので、1つに絞って集中的に指すことができる魅力があります。

振り飛車は不利飛車だから最初から居飛車をやったほうがいい説
振り飛車は不利だと言われています。プロは多くが居飛車党ですし、同じ棋力の将棋ソフト同士を戦わせても居飛車のほうが勝率が高いです。
それなら初心者のうちから居飛車をやって定跡を時間かけて学んだほうが良いという考え方もあります。たしかにプロを目指すような子供達にはそのほうが良いかもしれませんが、多くの人はアマで趣味として楽しもうとしているタイプだと思います。
そのような人には勉強時間が少なく上達しやすい振り飛車のほうがいいでしょう。そして初段以上になったら居飛車の勉強をするといいです。強くなってからのほうが定跡の理解も早いので初心者のうちに苦労して覚えるより効率がいいのではないかと思います。
まとめ
初心者は振り飛車をやるべき理由についての紹介でした。
序盤が1番好きとかプロの将棋を見るのが好きなど特別な理由がない限り、最短で初段を目指したい人は振り飛車をやるべきだと思います。
ぼく自身過去に何人かの弟子に継続的に将棋を教える機会がありましたが、いずれも居飛車党だったのでまず飛車を振ることをおすすめしました。
最初は居飛車党から振り飛車党になることに抵抗があるようでしたが、あっという間に初段を突破してくれました。そして弟子に共通することは終盤力も劇的に強くなったことです。
ということで初心者の皆さんは飛車を振って終盤の勉強に時間をかけましょう!