マイナー戦法

【将棋】クラリスシステムの狙いと組み方を解説!

クラリスシステム

 

まずは以下の局面をご覧ください。

 

クラリスシステム

 

角交換をし、向かい飛車にして囲いは中住まいという、奇妙なこの形をネット上ではクラリスシステムと呼ばれています。

定跡書には載っていないマイナー戦法で、主に薄い玉好きな人変態戦法好きの人が好んで指す戦法のようです。

上図は奇妙な局面ではありますが、変態戦法が好きな人なら一度は考える陣形で、ぼくも昔指していてそのときは「中住まい向かい飛車」と呼んでいました。

しかし一般的にクラリスシステムで定着しているようなので、ここではこの形をクラリスシステムと呼んでいきます。

今回はこのクラリスシステムという戦法はどういう狙いなのか?ということと、クラリスシステムの組み方について解説していきます。

 

クラリスシステムの3つの狙い

 

主に後手番で指すことが多いクラリスシステムには3つの狙いがあります。

クラリスシステムの狙い
  1. 後手番を生かして千日手狙いにすること
  2. ▲3六歩と突いてきたところを△8二角〜△7四歩と飛車のコビン攻めをして攻めていくこと
  3. 先手の指し方次第では、上図から△3五歩~△3四銀とし、場合によっては△4三玉から入玉を目指すという指し方

 

展開としては攻め切られて大差で負けか、受けきって全駒して大差で勝つかのどちらかになることが多く、1手違いの攻め合いになることは少ないです。

それぞれ1つずつ見ていきましょう。

 

千日手狙い

 

 

この局面から△6二玉~△5二玉をひたすら繰り返して千日手を狙うという指し方は一応狙い筋としてあります。

以下先手は位を黙々と取って銀冠に組み替えてきたとします。

 

 

これ以上囲いに手をかけることができなくなった先手が▲5八飛と回って攻めを狙ってくれば、△2七角と打ち、ここから先手を持って初見で攻めきるのは大変です。

△6二玉~△5二玉で千日手狙いは特に将棋ウォーズなどの切れ負け将棋で有効だと思います。

しかし千日手狙いはあまり面白くないですし、クラリスシステムはそこまで仕掛けにくい戦法ではないのでただの玉の移動を繰り返すだけでは普通に攻められて負けることが多いです。

例えば上図だと▲3七角と打開してくる手があります。

次に▲7四歩の狙いがあるので△3五歩▲同歩△同銀と角をいじめにいきますが、▲5五歩△同歩▲5八飛と回られると仕掛けが成功しており、受けきるのが容易ではない局面です。

 

 

クラリスシステムで千日手狙いはうまくいかないことが多いのでおすすめしない

 

▲3六歩と突いてくれば△7四歩~△8二角のコビン攻め狙い

ここからは千日手狙いではなく積極的に攻めや入玉を狙って勝ちに行く指し方をみていきましょう。

 

クラリスシステム

 

この局面から▲3六歩と突いてきたら、△7四歩▲8六歩△8二角と角を打って攻めにいく手があります。

 

 

▲1八飛には△2四歩と2筋突破ができるので、▲3七角と打ち返すしかないですが、△同角成▲同桂△3五歩▲同歩△同銀と跳ねさせた桂馬の頭を攻めていきます。

 

 

次に△3六歩が受からないので▲5五歩から暴れていくしかないですが、暴れてくるのを丁寧に受け止めて勝つのがクラリスシステムの勝ちパターンです。

▲3六歩と突いてきたらどんな形でも△7四歩~△8二角と攻めていくのが成功するというわけではないですが、狙いの筋の1つとして覚えておきましょう。

 

▲3六歩と突かれなければ△3五歩~△3四銀

 

この局面で▲3六歩と突くと△7四歩~△8二角の攻め筋があることがわかりました。

そこで先手が▲7五歩と△7四歩を突かせないように指してきた場合は△3五歩▲7七銀△3四銀と出る指し方があります。

 

 

狙いは単純で次に△2五銀と歩を取り、△3四銀~△2四歩~△2五歩と飛車先の歩を伸ばしていきます。

もちろん先手も飛車先突破される前に攻めていかないといけないのでこの指し方も先手が暴れてくるのを受ける展開になります。

一例としては、上図から▲7八金△2五銀▲4六歩△同歩▲同銀△4五歩▲5七銀△3四銀▲6五歩と進めます。

 

 

ここから△2四歩▲5五歩△同銀▲6六銀左△4四銀▲5六銀△2五歩▲5五歩・・・という展開に後手を持って自信がなければ、△4三金△4三銀~△4二玉のように徹底的に受けにいってどうかという感じになります。

後手を持ってかなり受けの力がいる展開ではありますが、先手としても鋭い攻めを連発しないと簡単に受け切られてしまうのでお互い怖いところです。

 

初手からクラリスシステムの組み方

クラリスシステムの出だしは色々あります。

 

  1. ▲7六歩△3四歩▲2六歩△8八角成▲同銀△4二銀▲4八銀△3二金
  2. ▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三角▲同角成△同桂▲6八玉△3二金
  3. ▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲7六歩△2二飛▲同角成△同桂

 

まずは汎用性の高い①の出だしから紹介していきます。

 

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8八角成▲同銀△4二銀▲4八銀△3二金

 

 

自分から角交換をしていく指し方なのでやろうと思えば先手番でもできます。(▲7六歩△3四歩▲2二角成・・・)

 

▲6八玉△4四歩▲2五歩△4三銀▲7八玉△4二飛

 

 

先に△4二飛と振っておくのがクラリスシステムを目指す上で大事な一手です。

以下先手が▲4六歩と突くと後に△5四銀~△4五歩の攻めが気になるので▲4六歩と突きづらいです。

クラリスシステムは4五の位を取らないと成立しないので、▲4六歩と突かせないのは重要です。

 

▲7七銀△7二金▲8八玉△6二銀▲7八金△4五歩
▲5六歩△3三桂▲5七銀△4一飛▲5八金△5四歩
▲6六歩△5三銀▲6七金右△4四銀右▲9六歩△2一飛

 

 

一気に進めましたが△4五歩と位を取ったあとは、居玉のまま△6二銀~△5四歩~△5三銀~△4四銀右と上がっていくのがクラリスシステムの組み方になります。

先手が淡々と囲ってくる相手であればそこまで駒組みに苦労することはないかと思います。

 

もっとも効率の良いクラリスシステムの組み方

先程見たクラリスシステムの組み方は、自分から角交換をして、△4二飛と途中下車をしているので組み上がるまでに結構手数がかかっています。

なので速攻を仕掛けられる心配もあるのですが、③の▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲7六歩△2二飛の出だしなら最短でクラリスシステム組めるので、この手順でクラリスシステムを使うのが1番効率が良いと思っています。

それでは早速その手順をみていきましょう。

 

初手から▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲7六歩△2二飛
▲3三角成△同桂

 

 

振り飛車党に対して▲2六歩△3四歩▲2五歩としてから▲7六歩という指し方はゴキ中や角交換振り飛車など色々な作戦を封じる意味で有効な指し方です。

第59期王位戦でも振り飛車党の菅井王位に対して挑戦者の豊島棋聖が全局先手番で▲2六歩△3四歩▲2五歩の出だしを選んだことが話題になりました。

上図では▲6五角というソフト発の指し方があり、序盤から激しい戦いになるのですが、先手が持久戦を好む人だとこの指し方は選びにくいものとなっています。

代わりに▲9六歩と突く手がよく指されていて、△9四歩と突き返せば今度こそ▲6五角と打ち、△4五桂▲4八銀△5五角に▲9七香と逃げておいて先手だけ一歩取った上で馬が作られるので先手良しとなります。

なので▲9六歩には△4二銀とするのですが、▲9五歩と端を突き越すことができるというのが先手の主張です。

しかしクラリスシステムはバランス重視の指し方のため、玉側の端歩を突く必要性がないので端に2手かけてくれたことを逆用していきます。

 

▲9六歩△4二銀▲9五歩△4四歩▲7八銀△4五歩

 

 

▲4六歩と突かれると嫌なので早めに△4五歩と伸ばしておくのが工夫の一手です。

先手も端に2手かけているため、この4五の位を目標に速攻を仕掛けられるのは難しいです。

 

▲4八銀△7二金▲6八玉△4三銀▲7九玉△3二金
▲5八金右△6二銀▲5九銀△5四歩▲6八銀△5三銀
▲7七銀右△4四銀右▲8六歩△2一飛

 

 

先手が早々に端歩を2回伸ばしてくれて、△4二飛の途中下車もなかったので最短でクラリスシステムに組み上げることができました。

ここから△5二玉か△4二玉と指し、△3五歩~△3四銀の攻めを狙っていく感じになります。

 

クラリスシステムはどんな相手に有効なのか?

定跡書に載っていないような奇妙な戦法なので、定跡に外れると弱い相手に有効です。

また、鋭い攻めが苦手な相手だとクラリスシステム相手に攻めきるのは大変なので簡単に受け切り勝ちできる可能性が上がります。

そして序盤でとりあえず玉を固めてから考えようというタイプの相手にも非常に有効な指し方です。

現代将棋はソフトの影響でバランスを取ることの重要性が分かってきたので居飛車側の右金を3八や4八に配置する人が増えてきました。

しかしこの戦法が流行っていたときは高段者でも金を▲5八金~▲6七金と玉の方に寄せて、ひたすら囲っている間に2~3筋から盛り上がってこられて完封負けみたいな展開がよくありました。

将棋の囲いというのは相手より相対的に少し堅ければいいので、クラリスシステムのような玉の薄い戦法相手に金銀4枚使って玉を固める必要はありません。

それを理解していない玉を固めるのが好きな人間には簡単に全駒ルートになります。

 

まとめ

クラリスシステムの狙いと組み方を紹介しました。

変態将棋が好きな人にはぜひ一度実戦で試してもらえればと思います。

振り飛車党の人も、先手から▲2六歩△3四歩▲2五歩と指されることが増えていると思うので、研究を外す意味で一芸としてクラリスシステムを習得しておくと面白いかもしれません。

皆さんの参考になれば幸いです。