棋譜並べ

【将棋】銀を使った歴史に残る妙手ランキング第5位から1位まで

 

銀という駒は将棋の駒の中でも真ん中くらいの価値があり、金と比べて攻めに使われることが多い駒です。

なので歴史に残る妙手も銀を攻めに使った手が多いです。

今回ランクインした5つの妙手の中には目を疑うような手がたくさんありますので、楽しんで見てくださいね!

それでは早速第5位から紹介していきます。

 

第5位 羽生ゾーン

5位に選ばれたのは、2006年の棋聖戦予選で指された先手羽生善治対後手村山慈明の一戦から。

 

今後手が△8一飛と飛車取りを受けたところです。

お互いに玉が薄く、先手としては攻めるか受けるか手が広そうで方針に迷う局面ですが、先手の羽生は意外なところに銀を連打していきます。

 

▲7二銀!△8二飛▲8三銀打!

 

後手玉を寄せるには飛車を手に入れるのが早いという発想で▲7二銀はまあわかるのですが、△8二飛に▲8三銀打と重ねるのが見えづらい一手。

普通は▲7三馬を考える所ですが、飛車を取ったあと8二の位置にいる馬の働きがイマイチのため重ね打ちして無理やり飛車を取りにいくという発想です。

ちなみに8三の地点は羽生ゾーンと言われていて、ここに金銀を打ったときの羽生の勝率は高いそうです。

普通8三のようなそっぽの地点に金銀を打っていくというのは効率が良くないのですが、そこに金銀を打って勝率が高いというのは羽生の駒の使い方のうまさが良くわかりますね。

 

第4位 鬼手という表現がよく似合う銀打ち

第4位の妙手は2012年の王座戦第4局、先手渡辺明、後手羽生善治の一戦から。

 

ノーマル三間飛車から激しい終盤戦になり、今先手が▲8八同金としたところです。

後手玉は現状▲8三飛△同金▲同銀成△同玉▲8二飛△7四玉▲6六桂△6四玉▲5四金までの詰めろがかかっています。

なので後手は受けに回るしかないと思われていましたが・・・。

 

△6六銀!

 

 

持ち駒の銀を歩の頭に打つという驚きの一手が飛び出しました。

この手自体が先の▲6六桂を打つ筋を消していて、次に△8八角成▲同玉△7七銀成以下の詰みが生じているので、詰めろ逃れの詰めろになっています。

実戦は▲同歩と取りましたが、▲6六桂の筋が消えて後手玉の詰めろが消えたので、△8九金と攻めるターンが回りました。

以下▲9八飛から千日手となりました。

この対局はニコニコ動画の生放送で中継されていて、解説者が△6六銀を見た瞬間驚きの声を上げており、プロでも驚く鬼手でした。

 

第3位 歴史に残る一手

第3位からはかなり知名度の高い手が登場します。

1979年名人戦第4局、先手中原誠、後手米長邦雄の一戦から。

 

 

局面は▲3三歩の王手に△同桂と応じたところです。

先手玉は△4八飛成以下の詰めろがかかっているため、▲5四角△3一玉▲6二金のような手は指せません。

また、▲6七金と馬を取っても△4八飛成から寄りです。

一見先手負けの局面に見えますが、歴史に残る妙手が登場します。

 

▲5七銀!

 

馬で取られるところにあえて銀を動かすのが歴史に残る妙手でした。

実戦は△同馬と取りましたが、▲5四角△3一玉▲3三桂成△同銀▲6二金△4八飛成▲5八桂と進み、以下先手の勝ちとなりました。

手順の途中▲3三桂成を入れるのが重要な一手で、△4八飛成と王手されたときに桂の合駒を打てるようにしておかないと先手玉が詰まされてしまいます。

▲5七銀から馬の位置をずらすことで先手玉への詰みを消すという素晴らしい一手でした。

なお、同じように▲3七銀と逃げるのは△5九飛成が5三の金取りと△7七馬から詰めろになっているので先手負けです。

ちなみに先手の中原は▲5七銀は数手前に気づいており、歴史に残る妙手になると心の中で思っていたようです。

この▲5七銀が指されたのは今から約40年前ですが、中原が対局中に思っていたように今でも語り継がれる妙手でした。

 

第2位 天来の妙手

次も将棋ファンで知らない人は少ないかもしれないというぐらいの妙手で、「天来の妙手」と50年近く経つ今もなお語り継がれています。

1971年の名人戦第3局、先手大山康晴、後手升田幸三の1局から。

 

 

今△2六歩に▲同飛と取った局面です。

現状4六銀、1三角、7六桂と色々アタリになっていて後手が忙しそうに見えます。

しかしここから一気に駒を捌く絶妙の手順が飛び出します。

 

△3五銀!

 

 

角でタダ取りされるところに銀を引いたのが絶妙手で、飛車金のアタリのため取るしかない▲同角△3四金と出て一気に駒が捌けています。

△3四金に▲同金は△3五角、実戦の▲5七角にも△2四金▲3六歩△2五歩▲2九飛△3六飛・・・と進み、抑え込まれていた飛車を捌くことに成功しました。

 

 

この局面はもう後手勝勢に近い形勢なのですが、ここから100手以上続き一時先手がかなり盛り返しましたが、最後は後手勝ちになります。

この1局は△3五銀という絶妙手ばかり語り継がれていますが、決め手に近い妙手を喰らっても倒れない大山の粘りにも学ぶべきものが大いにあります。

 

第1位 将棋の歴史上もっとも有名な妙手

第1位は銀というより将棋の歴史上もっとも有名な妙手と言ってもいい一手で、YouTubeなどでも多く知られています。

1989年のNHK杯、先手羽生善治、後手加藤一二三の一戦から。

 

 

局面は▲3二とに△同玉とした局面です。

次に後手から△2九歩成と攻められる手が残っており、忙しい局面に見えます。

一気に後手玉を寄せきりたいところですが、左辺には攻めの拠点がなく、寄せるのは難しそうに見えます。

しかし先手の羽生は将棋史上に残る絶妙手を指して一気に寄せきってしまいます。

 

▲5二銀!

 

金と飛車が利いているところに銀を放り込むのが絶妙手で、どちらで取っても▲1四角△4二玉▲4一金までの3手詰めです。

この銀を取れないとしたら、本譜の△4二玉ぐらいしか受けはありませんが▲6一銀不成がまた詰めろ。

実戦は以下△2九歩成▲2八歩△3九と▲3二金までで先手の勝ちとなりました。

この▲5二銀という妙手を指されて敗れた後手の加藤はこの手について「奨励会初段でも指せる一手で羽生さんなら瞬時に見える手、これで負かされてもなんとも思わない」と語っています。

しかしアマチュアには次の一手問題として出されでもしないと見えそうにない一手で、後世に語り継がれるにふさわしい妙手だと思います。

 

まとめ

銀を使った妙手ランキングは5局のうち3局羽生さんがランクインするという結果になりました。

羽生さん本人は1番好きな駒は銀らしいので、愛着の湧く駒だからこそこれほど素晴らしい妙手をたくさん生み出しているのかもしれませんね。

皆さんも歴史に残る銀を使った妙手を見ることで、銀という駒の性能を再認識し、自分の実戦でも素晴らしい妙手が指せるようになるといいですね!