一間飛車はプロ間ではほとんど指されませんが、一部のマイナー戦法好きのアマに根強い人気のあり、意外と奥が深い戦法です。
展開によっては居飛車っぽい形になることも多いのですが、基本的には石田流のような形になるので、振り飛車党が裏芸としてやるのにおすすめの戦法です。
それでは早速一間飛車がどのような戦法かということと、一間飛車を指しこなす方法を紹介していきます!
一間飛車とは
将棋は1番強い飛車が動いた位置により戦法名が異なっていて、一般的には、
飛車の位置(先手目線) | 戦法名 |
8筋 | 向かい飛車 |
7筋 | 三間飛車 |
6筋 | 四間飛車 |
5筋 | 中飛車 |
4筋 | 右四間飛車 |
3筋 | 袖飛車 |
2筋 | 居飛車 |
とそれぞれ分類されています。
一間飛車はこの表に載っていない1筋に飛車を動かす指し方のことで、めったにお目にかかることはありません。
一間飛車の指し方
まずは先手番で一間飛車を指す方法を見ていきましょう。
▲1六歩!△3四歩▲1五歩!(下図)
序盤からいきなり端を2回伸ばしていくのが一間飛車にするために大事な指し方です。
△8四歩なら▲1八飛と1筋に飛車を動かします。
この局面でちょっとずつ一間飛車の狙いが見えてきましたね。
上図から△8五歩▲7八金△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩
△8ニ飛▲1六飛△3ニ銀▲7六歩△3三銀▲7五歩(下図)
△8五歩には▲1六飛と飛車の横利きで8筋を守る手もあるのですが、おすすめはわかりやすく▲7八金と守っておくことです。
後手の△8六歩からの飛車先歩交換後に▲1六飛と浮き、もし△6ニ銀や△4ニ玉のような手を指してきたら▲3六飛と3四の歩をかすめ取りにいく手があります。
なので▲3六飛を防ぐ意味で△3ニ銀と指しますが、▲7六歩として△3三銀に▲7五歩と突いた局面は、石田流+玉側の端歩を突き越した少し見慣れた形になります。
先手は飛車の動きで少々手損をしますが、その分玉側の端歩を突き越しているという得もしているので、代償は取れています。
上図からは素直に美濃囲いに組むまでおとなしく指すのもありますし、以下のように飛車をぶつけていく指し方などもあります。
持久戦になれば1筋の突き越しが効果を発揮するので△8五歩とは打ちにくいですね。
相手の指し方次第では後手の3四の歩を狙って▲3六飛とする手があるので目を光らせるようにしよう
持久戦になれば▲1五歩と伸ばしているのが大きい
一間飛車対振り飛車
次に相手が振り飛車党だった場合の指し方も見ていきましょう。
振り飛車党の場合は▲1六歩△3四歩▲1五歩には△3五歩か△3ニ飛と振ってくる場合が多いです。
ここから普通に居飛車や相振り飛車にするのももちろんありますが、一間飛車にこだわって▲1八飛と指すこともできます。
以下△3五歩▲1六飛△3四飛▲7六歩△3三桂と進めます。
途中△3四飛と飛車を浮くのが後手に大事な一手で、これを怠って△6ニ玉と指すと▲2六飛△3三飛▲7六歩とされて嫌な形になります。
というわけで上図のように△3三桂と受けましたが、先手はここから、
- 右に玉を囲って▲7五歩から相振りっぽく指す
- 左に玉を囲って対抗型にする
と2つ指し方を選ぶことができます。
相振り飛車なら一例として以下のような局面になります。
▲1五歩と伸ばした効果で△1四歩~△1三角と石田流本組みの形を防いでいますが、端攻めをされやすいというデメリットもあり微妙です。
△5四歩から△5三銀~△6四銀と7五の歩を狙われるのも嫌なので、個人的には相振りっぽく指したくはないですね。
次に先手が対抗型っぽい指し方を選ぶと以下のような局面が考えられます。
今度は先手の飛車の横利きが止まって指しづらそうですが、▲3六歩から攻める狙いがあるので先手が指せる局面です。
対振り飛車相手には無理に石田流の形にせずとも、1六の地点飛車を置いて指して問題なさそうです。
後手番での一間飛車の指し方
今まで先手番での一間飛車の指し方を紹介しましたが、後手番でも一間飛車を指すことができます。
ところで先手番では1筋に飛車を振るので一間飛車と呼ばれていますが、後手番なら9筋に飛車を振ることになるので九間飛車と呼ぶのが正しいのかもしれません。
しかし後手番でも一間飛車と呼ぶのが一般的なので、この記事でも一間飛車と呼んでいきます。
まず、後手番の一間飛車の出だしは先手番のときとあまり変わらず、以下のように指していきます。
▲7六歩△9四歩▲2六歩△9五歩▲2五歩△3ニ金(下図)
上図から飛車先歩交換をしたり▲4八銀から囲ってくるなど何をやられても△9ニ飛から△9四飛で石田流の形を狙っていきましょう。
ちなみに2手目△9四歩から一間飛車にする指し方を紹介しましたが、2手目△3四歩に先手の▲2六歩と居飛車にするのを確認してから△9四歩と一間飛車を目指す指し方もあります。
これなら▲7六歩△3四歩に▲6六歩や▲7五歩と先手が振り飛車を目指してきたときに、一間飛車にしないで別の振り飛車対策を指すことができるので、作戦の幅を考えたらこっちのほうがいいですね。
まあそういう背景を知りつつ△9四歩と突く人は一間飛車ラブ感が溢れているので、それはそれでかっこいいのですが・・・w
プロの一間飛車実戦例
一間飛車はプロの実戦ではほとんど指されませんが、トップ棋士同士がNHK杯という注目を浴びる棋戦で一間飛車を指した棋譜があるのでそれを1局紹介します。
升田式石田流っぽい形になっていますが、序盤は後手まずまずの展開だったように思います。
一間飛車を拒否られた場合
一間飛車には致命的な弱点があって、それは端歩の突き越しを許してくれなかったときに指すことができないという点です。
例えば▲1六歩に△1四歩と指されると▲1八飛~▲1六飛と指すことができないので一間飛車は諦めて別の戦法を指す必要があります。
しかしちょっと高度な話になりますが、1筋の突き合いは、
先手振り飛車、後手居飛車の場合 | 後手居飛車穴熊にしづらいため得 |
相振り飛車の場合 | 損得微妙 |
先手居飛車、後手振り飛車の場合 | 端歩の税金を0手で入れているため得 |
相居飛車の場合 | 損得微妙 |
こんな感じで先手に得になるパターンが多いです。
なので一間飛車が指せなくなったから渋々ではなく、喜んで別の戦法を指しましょう。
まとめ
一間飛車は一部のマニアに根強い人気があり、一応プロの公式戦でも採用されるくらいには優秀な戦法なので、興味を持った人はぜひ一度実戦で試していただければと思います。
しかしメイン戦法として据えるのはちょっと苦しいと思っているので、あくまで裏芸としてたまに指すくらいにしておくことをおすすめします!