将棋で対局者同士で実力差がある場合、上位者の方が駒を落としてハンデをつけることがあります。
これを駒落ちといいます。下の図は駒落ちでもっともポピュラーな二枚落ち(飛車角落ち)です。
駒落ちはプロやアマ強豪に指導対局をしてもらうときによく用いられます。
しかし中にはハンデをつけられているというのを嫌ったり、平手の定跡が使えず感覚が狂うから好きじゃないという人もいます。
そんな駒落ちですが、今回のテーマは駒落ちは将棋の上達に効果があるのかどうか?ということです。
結論からいうと駒落ちは上達にとても効果があるので駒落ちをやってくれる上位者がいれば積極的に指導してもらうべきです。
駒落ちはなぜ上達に効果があるのか、その理由について解説していきたいと思います。
駒落ちだと上手に本気を出してもらえる
※駒落ちで駒を落とす側を上手(うわて)と呼びます。
棋力差のある相手だと、通常のハンデなし平手では勝負にもならずボコボコにやられてしまいます。
一方的にやられてしまうのは勉強にもならないですし、相手も本気を出してくれないのでせっかく自分より強い相手と指しても実りが少ないです。
しかし駒落ちをすることでボコボコにやられることはありませんし、上手としても本気を出さないと勝てません。
自分より強い相手の本気を出した技術を体感するというのは上達に効果があるので、平手で勝負にならないような相手には積極的に駒落ちをしてもらうようにしましょう。
駒落ちは勉強してきた定跡が実戦で登場しやすい
駒落ちにも定跡があり、平手ほどではないですが、定跡書もそれなりに発売されています。
ただ平手と違うのが、駒落ちは定跡通りに進みやすいということです。
一例として2枚落ちの定跡手順を見てみましょう。
初手から△6二銀▲7六歩△5四歩▲4六歩△5三銀▲4五歩(下図)
角道を開けたあと4筋の位を取ることで上手から△4四歩と突くことを阻止します。
このあと下手の狙い筋として、▲3六歩~▲3五歩~▲3四歩と角筋を生かして攻める手があるので、上手は△3二金~△2二銀と金銀を使って守らないといけません。
△3二金▲4八銀△6二玉▲4七銀△6四歩▲3六歩
△7四歩▲3五歩△2二銀▲3八飛△6三玉▲3四歩
△同歩▲同飛△3三歩▲3六飛△6二金▲4六銀
△7三金▲3五銀(下図)
このように4五の位を取ったあと3筋の歩を交換して3五に銀を配置して攻めを狙うのが二歩突き切りと呼ばれる定跡です。
特筆すべき点は今の手順、上手に変化の余地がほとんどないということです。
序盤から4五の位を取られることも阻止できないし、壁銀も強要されて3筋の歩交換にも反発できない。
上手から変化の余地がないということは、事前に勉強してきた定跡手順をそのまま披露できるということになります。
平手だとせっかく定跡を勉強してもすぐに実戦で披露できるということは稀です。
しかし駒落ちなら容易に勉強してきた手順が実戦で登場するという違いがあるので勉強へのやる気が違ってくると思います。
定跡勉強→実戦で披露→優位に立つ
この流れをより早く掴めるのは駒落ちなので、定跡勉強の重要さを学びたければ駒落ちをやるのが1番です!
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駒落ちの上手を持っても上達に効果がある

今までは駒を落としてもらう側の下手(したて)目線でしたが、駒落ちの上手を持っても勉強になります。
駒落ちの上手は不利な局面からスタートするので、相手にミスをしてもらわないと勝てません。
なので相手にミスをさせる技術や、「こうやられたら負けだけど相手の力量なら指せないだろうからこうやる」というような力量を把握して指し手を選ぶ技術が必要となってきます。
あとは駒落ちだと戦力が足りないので、玉も攻め駒として使っていく必要がありますが必然的に玉が薄い状態で戦うことになります。
薄い玉で戦うと、常に自玉の安全度に気を配らないといけないのですが、これがけっこう勉強になります。
また、さっきは駒落ちは勉強してきた定跡が登場しやすいということを言いましたが、駒落ちにも裏定跡は存在します。
二枚落ちだと△5五歩止めと呼ばれる指し方が裏定跡の1つです。

正しく対応されると本定跡より不利になってしまいますが、相手を観察してよく研究してそうなタイプにはあえて裏定跡で外すという上手もけっこういます。
裏定跡を使うかどうかは、相手がどんなタイプか見極めないといけないので観察力を鍛えないといけないですが、駒落ちの上手を持つと自然と観察力もついてきます。
まとめ
駒落ちが上達に効果的な理由の紹介でした。
ぼく自身は上手を持つ機会が多かったのですが、そのせいで薄い玉で戦うのが好きになり、平手で普通に指してるつもりでも「駒落ちの上手みたいな将棋だね」と言われるようになりました。
褒め言葉かどうかはわかりません・・・。
それでは今回の内容をまとめてみます。
- 上手に本気を出してもらえる
- 勉強が実戦に生かしやすく、定跡を学ぶ楽しさと重要性がわかる
- 上手を持つと観察力と薄い玉の感覚が身につく
駒落ちは上手も下手も勉強になるので、棋力差があるときは積極的に駒落ちで対局をやってみてください!