今回は相手の実力に応じて作戦を変えると今より勝率が上がるのではないか?という話です。
将棋では自分より弱い格下の相手には持久戦にするほうがよく、自分より強い格上の相手には急戦をしたほうがいいと思っています。
その理由について詳しく紹介していきます。
格下には持久戦にしたほうが良い理由
将棋は1局の将棋の手数が伸びれば伸びるほど実力の差が出てきます。
例えば強い人が平均で80点の手を指し続けて、弱い人は70点の手を指し続けるとします。
そうなると手数が伸びるほど10点の差が出てきて、その差が積み重なって勝敗に結びつきます。
これはイメージの話なので想像が難しいと思うので、大山十五世名人の将棋の例を紹介します。
これは1990年の順位戦で指された将棋で、後手が大山十五世名人です。
現代将棋の感覚で言えば、上図のように4枚穴熊に組ませてしまうと振り飛車ボロ負けという感じです。
しかし昭和の大名人からすれば、がっちり4枚穴熊に組んでくれれば長期戦になるからありがたいと思っていたのではないでしょうか。
大山十五世名人の名言に「人間は必ずミスをするもの」というのもありますし、長引けば相手が間違い、自分は間違えないという自信があったかもしれません。
実際この将棋も156手で勝ちきってしまいます。
格上には急戦にしたほうが良い理由
持久戦の理由の正反対で、相手が自分より強いのであれば、長引けば長引くほど先に間違えるのは自分のほうです。
それならば1局の手数が短く終わることの多い急戦を指したほうが一発入れやすいです。
急戦は一直線の寄せ合いになりやすく、強い人特有の「うまい誤魔化し」が出にくい展開になるので格下側にとっては急戦のほうが勝ちやすいです。
相手を見て作戦を切り替えるテクニック
どういう風に急戦、持久戦に切り替えるか例をあげてみます。
ゴキゲン中飛車の定跡手順の1つです。
▲2四同飛とした局面で主流な定跡は△5六歩となっていますが、中盤のない一直線な終盤戦になります。
一方△3二金とすると一直線の変化にはなりませんが、先手の主張が通るので後手不満と言われている変化になります。
これを急戦、持久戦理論にあてはめて考えれば、相手が格下なら△3ニ金として持久戦狙いにし、相手が格上なら△5六歩と一直線の終盤戦を選ぶのがいいです。
もちろん自分が指し慣れているとか、研究した結果悪い変化が見つかったとか状況によって変わりはしますけどね。
1つの戦法に急戦、持久戦の定跡を研究しておく
先程のゴキゲン中飛車の変化のように、相手に応じて急戦、持久戦を変えられるように複数得意戦法を用意しておくと更に有利に戦うことができます。
例えば対振り飛車で考えると、
急戦 | 持久戦 | |
対ノーマル四間 | 棒銀 | 穴熊 |
対ノーマル三間 | ▲4五歩急戦 | 穴熊 |
対ゴキゲン中飛車 | 超速 | 穴熊 |
対向かい飛車 | 棒銀 | 左美濃 |
こんな感じでそれぞれの定跡を研究しておいて、相手の棋力に応じて急戦、持久戦にするか決めるというのは戦略的にありだと思います。
中終盤の展開選びテクニック
今までは序盤戦の指し方についての紹介でしたが、格下か格上かによって中終盤の指し方を変えるというテクニックもあります。
例えば自分が優勢な局面で、
- 一直線の変化で多分勝ちになっているけど読みきれず、読み抜けがあったら即負けになりそうな手
- +300点くらいの有利になるけど、まだまだ先が長そうな手
この2つの候補手がある場合、相手が格上なら①を選び、格下なら②の変化を選ぶという感じです。
格上相手に+300点くらいの有利さでは逆転される可能性が高いですが、逆に格下が相手なら先に相手の方から土俵を割ってくるということも考えられます。
まとめ
相手の棋力に応じて急戦、持久戦どちらにするか選ぶというテクニックを紹介しました。
相手の棋力がどうであろうが自分が最善だと思う手を指すという棋理を追求する考え方の人もいますし、そのほうが立派だとは思いますが、勝負にこだわりたい人はこの理論も覚えておきましょう。