将棋のプロなら誰もが持っている脳内将棋盤。
その名の通り脳内に将棋盤があるかのように頭の中だけで将棋の駒を動かし検討したりすることができます。
そんなとても素人にはできなさそうな脳内将棋盤ですが、将棋の上達にすごいメリットがあり、そして誰でも作ることができるのです。
今回は脳内将棋盤を作るとどのようなメリットがあるのかということと、誰でも作れる方法を紹介したいと思います。
Contents
脳内将棋盤を作るメリット
脳内将棋盤を作るメリットをまとめるとこんな感じになります。
- 歩きながら詰め将棋が解ける
- 暇なときに将棋盤を出さなくても研究ができる
- 感想戦などで駒を動かさなくても検討ができる(脳内将棋盤がある相手に限る)
この3つはめちゃくちゃ素晴らしいメリットです。
スマホとかで問題図とにらめっこしなくても、詰め将棋が解けるようになると日常的に詰め将棋を解く時間が増えて、飛躍的に棋力向上します。
毎日歩く時間が長い人には特に効果があると思います。
脳内将棋盤を作った私の経験談
これから脳内将棋盤の作り方について紹介していくのですが、これ書いている人間は脳内将棋盤あるのか?と思われそうなので一応経験談を載せておきます。
私自身は将棋仲間と、脳内将棋2面指しで反則なしで終局まで普通に指せて、内容もそれなりにやれていました。(昔の話ですが)
1日30分ほど歩く時間があったのでその時間は13~60手くらいのひと目では解けない詰め将棋を記憶して脳内で解いてましたね。
また、周りにも脳内将棋盤を持っている人達がいたので、雑談しながら脳内将棋で対局したりと日常的に脳内将棋盤を使っていました。
脳内将棋盤動かしている途中で寝落ちして、夢の中で詰め将棋を解いていたということもありました・・・本当に寝ていたのか疑問です。
肝心の棋力向上にはすごく役に立ったと思っています。
やっぱりある程度強くなるためには将棋をやる時間を増やさないといけないので。
脳内将棋盤はその時間を増やすのに大きく貢献してくれました。
脳内将棋盤の作り方
というわけで脳内将棋盤を作るメリットが伝わったと思うので、早速作り方についてみていきましょう。
- 盤面が狭めの詰め将棋を解く
- 自分の得意な戦型だけをたくさん指す
- 自分の得意な戦型を脳内で棋譜並べをする
以上、この3つとなります。
それでは1つずつどのようにやるのかを解説していきます。
盤面が狭めの詰め将棋を解く
できるだけ盤上に駒が少なくて、手数も5~11手くらいの簡単な詰め将棋がいいです。
例として1つ題材を用意したので実際にやってみましょう。
以下の局面をパッと見て覚えたら目を閉じて考えてみましょう。
9手詰めですが手駒が少ないので攻め手のパターンは限られているので解きやすいと思います。
どうでしょうか?盤面を記憶して脳内だけで解けましたか?
最初は難しいかもしれませんが、駒の配置を覚えるのには時間をかけてもいいので、できるだけこの局面図を見ないで頭の中で駒を動かして解くようにしましょう。
普通の将棋だと9×9マスにある駒全てを記憶しないといけないですが、詰め将棋ならこのように4×4マスの狭い範囲だけ覚えればいいので始めのうちは狭めの詰め将棋を解くのがおすすめの練習方法です。
同じ戦型をたくさん指して棋譜だけで振り返る
脳内将棋盤を作るのに同じ戦型をたくさん指すというのは効果的です。
この理由を説明するために、究極の鍛錬という本からチェスを題材にした研究の一文を紹介します。
素人にとっては、チェスの一マスに置かれた駒が一つの情報の塊だった。一方、何年にもわたり実戦での駒の動かし方を研究してきた達人にとっては、一つの塊ははるかに大きかった。
~~~中略~~~
一流のチェス競技者はチェス盤を見る時、文字ではなく単語として見ている。二十五個の駒を見る代わりに五、六個の駒を塊として見ている。だから一流のプレーヤーは駒の位置を簡単に思い出すことができる。
2010年 ジョフ・コルヴァン サンマーク出版 『究極の鍛錬』144ページより引用
これはチェスが題材ですが将棋に置き換えて考えても分かりやすいと思います。
将棋も強くなればなるほど駒を1つの塊として認識できるようになります。
例えばこの局面。
将棋を知らない人、もしくは始めたての初心者がみても駒が適当に並んでいるという風にしか認識できないと思います。
しかしある程度将棋が強くなれば、3九玉型の美濃囲いだなと認識し、この11個の駒を1つの塊として認識ができるようになります。
この塊として認識する能力は強くなればなるほど増えていくので、強い人ほど脳内将棋盤が作れるのはこの塊認識能力が理由だったのです。
この塊認識能力のことを専門用語でチャンキングと言いますが、実は日常生活でもやっていることだったりします。
12301231111213
例えば上の14桁の数字をそのまま覚えようとしたらかなり苦労しますが、1230/1231/11/12/13と日付順に並んでいると記憶すれば誰でも14桁の数字が覚えられるようになると思います。
これを応用して将棋でもチャンキングできるようにするために、同じ戦型を指しまくりましょう。
そうするとその戦型によく登場する形を覚えることができるようになります。
この局面は一例ですが、ノーマル三間飛車をたくさん指す人には、美濃囲い+▲5九角型、石田流本組の形、相手の穴熊囲い、相手の飛車側の配置のチャンキングができるようになるかと思います。
すると40枚の駒が9×9マスに散らばっていて覚えるのが無理ゲーに見えても、徐々に駒の配置が脳内に浮かびやすくなります。
自分の得意な戦型を脳内で棋譜並べする
そして最後の仕上げです。自分が指しまくっている戦型を脳内だけで棋譜並べします。
題材として先程紹介した上図の局面の棋譜を初手から載せてみます。
これを脳内だけで並べて上図の局面のようになっているか実験してみましょう。
▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲7八飛△8五歩
▲7七角△6二銀▲6八銀△4二玉▲4八玉△3二玉
▲3八銀△3三角▲3九玉△2二玉▲6七銀△1二香
▲7五歩△1一玉▲5九角△2二銀▲7六飛△5四歩
▲7七桂△5三銀▲5八金左△4二角▲6五歩△4四銀
最初のうちはどこかしら記憶が薄れている部分が出てくるかと思いますが、最初のうちはそんなものです。
何回も繰り返せば覚えられる範囲が増えてくるので、めげずにトレーニングしてみましょう!
才能や記憶力がなくてもトレーニング次第でできる!
「プロやアマ強豪(ついでに私)が脳内将棋盤を作れるのは才能や記憶力が高いからだろう!自分には無理だ!」
と、諦めている人もいるかもしれません。
そんな人には究極の鍛錬からもう1つチェスにおける実験を紹介しましょう。
熟練したチェスプレーヤーとまったくの素人が、実戦に基づいて置かれているチェス盤の二十五個の駒をほんの五秒から十秒見せられ、その位置を思い出すように言われたとしよう。結果は想像のとおりだ。チェス名人はたいていの場合すべての駒の位置を覚えているのに、素人は四か五駒しか覚えていない。そして今度は、研究は同じことを繰り返すものの、駒の置き方を実戦形式ではなくでたらめに置く。こうするとチェスの素人はやはりたったの四、五駒しか覚えていないが、生涯チェスに身を捧げてきたチェス名人も今度は六、七駒しか覚えておらず、素人より少しましなだけだった。
2010年 ジョフ・コルヴァン サンマーク出版 『究極の鍛錬』72-73ページより引用
素人とチェス名人はでたらめに置かれた駒の配置だと、記憶の差は大してないという結果だったということです。
つまりチェス名人が優れているのは記憶力ではなくチェスのチェンキング化であって、記憶力自体は素人と変わりがないということです。
私も脳内将棋盤はありますが、記憶力は別によくありません。
ですが、「美濃」と心の中で唱えればスッと美濃囲いの形が瞬間的に脳内に浮かびますし、「穴熊」と唱えれば色々な形の穴熊がスライド式のように頭の中にパッパッと出てきます。
これはたくさん将棋を指してチャンキング化をしてきたからです。
特別な才能や記憶力は必要ありません。
脳内将棋盤を作ろうと決意して、将棋をたくさん指す。あとは脳内で駒を動かすトレーニングさえすれば誰でも脳内将棋盤は作れます!
まとめ
脳内将棋盤についての紹介でした!
今回の内容をかんたんにまとめるとこんな感じになります。
- 脳内将棋盤を作ると棋力がめっちゃ上がる!
- 脳内将棋盤を作るには盤面狭めの詰め将棋を解く!
- 同じ戦型を指しまくってチャンキング化する!
- 指しまくった戦型を脳内棋譜並べする!
正直なところ、初段を目指すのに脳内将棋盤は必須ではないです。
しかし脳内で将棋ができるってかっこいい感じがしますし、棋力アップには大きく貢献します。
興味のある人は狭めな詰め将棋を解くところからちょっとずつトレーニングしてみてくださいね!