将棋の上達には対局後の振り返りと反省が欠かせません。
対局後の振り返りには感想戦と呼ばれるものもありますが、感想戦は対局後直後に対局者同士で行うものです。
感想戦は敗者をいたわる意味もあったりするので検討してもしょうがない局面をつついたりすることも多々あり、勉強にならないこともあります。
そこで今回紹介するのは感想戦ではなく、1人で行う対局後の反省の効率を高める方法についてです。
早速その方法をまとめてみます。
- 対局した時間以上に反省に時間をかけない
- 序盤の反省は仕掛けの局面まですっ飛ばす
- 中盤は形勢が大きく動いた局面、自分の形勢判断が正しかったか確認
- 終盤まで互角の場合は自分か相手の敗着を特定
実際の対局の反省例 ~序盤から仕掛けまで
先手ノーマル三間飛車、後手居飛車穴熊の1局を効率良く反省する例をみていきましょう。
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲7八銀 △6二銀
▲6七銀 △5四歩 ▲5六銀 △5三銀 ▲7八飛 △8五歩
▲7七角 △4四銀(下図)
いきなり実戦例の少ない出だしとなりました。
しかし序盤の反省は仕掛けの局面まですっ飛ばすのがいいです。
序盤で反省が必要なほど大きなミスをすることはあまりないですし、序盤の局面を検討するよりも仕掛け以降の局面を検討したほうが得られるものが大きいからです。
▲4八玉 △4二玉 ▲3八玉 △3二玉▲5八金左 △3三角
▲7五歩 △2二玉 ▲5九角 △1二香(下図)
△1二香と上がって後手が穴熊を目指したところです。
実戦はここから▲7四歩△同歩▲同飛と進みました。
駒がぶつかったのでこの辺りの局面から反省をします。例えば実戦はここで仕掛けましたが、▲2八玉から囲うのはどうだったのかなど。
飛車先の歩交換に対して、実戦は△3二金と進みます。△3二金は△1一玉と比べて離れ駒を作らず穴熊に組む形を残す好手です。
それに対して▲6五銀が実戦の手順です。
このような局面はノーマル三間飛車対居飛車穴熊で出現しやすいので、この局面を反省することは次の対局にも繋がります。
なので反省に時間を使うなら仕掛け周辺を検討しましょう。
もし反省した結果、駒がぶつかる前にすでに形勢が離れていることが分かったら序盤作戦に問題があるということなので、序盤の指し手にミスがないか検討し直す必要があります。
序盤の反省は仕掛けまで飛ばして、仕掛けの局面に1番時間を使うこと
仕掛け後の反省
先手が▲6五銀と出た局面でまず気になるのは、△8六歩▲同歩△8八歩と攻められることです。
と金作りは受からないので、先手としては暴れるしかなくなります。しかし後手のほうが玉が堅いのでうまくいくか精査しなくてはいけません。
しかし実戦は△8六歩の攻めを見送り後手は囲う展開を選びました。
△4五銀▲7六飛 △1一玉 ▲7四歩(下図)
▲7四歩と打った局面です。実戦は△7二歩でしたが、これは局面が収まるので先手としても一安心。
ここでは△8三飛や△7二金のように持ち歩を残して受ける手をされると、歩が手持ちにあるので△7五歩▲同飛△6六角のような狙い筋も残ります。
そうなると先手としても神経を使う展開が続くので気になる変化でした。
このように、もし実戦とは別の手を指されたら?というのを考えておくと、経験値アップにもなります。
棋譜並べでも同じように思えますが、自分が実際に体験した局面でこう指されたら?というのは自分が体験していることで、棋譜並べより一生懸命考えることができます。
一生懸命考えることができれば、適当に考えているときより上達スピードが違ってきます。
仕掛けの局面の反省で考えたいのは、
- 相手が一直線の手順を選んできたとしたらどうなっていたか(自分にあまり変化の余地がない手順)
- 実戦で相手に指されなかったが、気になっていた変化
特に実戦で相手に指されなかったけど自分が気にしていた変化というのは、自分の中で解決しきれなかった変化なので、これを検討することは自分の上達に大きく繋がる可能性が高いです。
形勢が大きく動いた局面の反省
△7二歩と打って後手が局面を収めたところから一気に局面が動きます。
▲7七桂 △3五歩▲4六歩 △同 銀 ▲5四銀 △5五銀
▲6五桂 △6四銀▲5三桂成(下図)
先手の左桂が一気に捌けました。
普通は左の桂馬が無条件で捌ければ振り飛車優勢なのですが、△4六桂と両取りに打つ手があるので駒損は取り返すことができます。
△同 銀 ▲同銀成 △4六桂 ▲2八玉 △5八桂成▲同 金(下図)
ここで形勢判断をしてみましょう。
- 駒の損得なし
- 駒の効率は後手の飛車が使えておらず、先手の成銀、持ち駒の桂と後手の8一の桂馬の差で大差で先手が勝る
- 玉の堅さは居飛車が優勢だが3四の傷もありそこまで差がない
- 一気に攻めきる有効な攻めも後手にはない
結論:先手優勢
実戦はこのあと先手が完封勝ちとなりました。
▲7四歩に△7二歩と受けたところでは互角と言える局面だったので、形勢が大きく動いた理由の悪手はなんだったのかというのを特定します。
この将棋では以下の図の△3五歩と突いたのが悪手だった可能性が高いです。
一見玉頭を狙って良さそうな手に見えますが、その分自玉も3四の地点に傷ができてマイナスも大きいですし、何より▲4六歩から▲5四銀の仕掛けを許してしまったのが痛いです。
ここは△3五歩に代えて△5五歩と狙われている歩を伸ばす手や、△7二歩と局面を収めた手の方針に従って△2二銀と玉を固めるのもありました。
後手としては「▲4六歩から▲5四銀と出られ、その後先手の左桂に捌かれても△4六桂の筋があるし、自陣は穴熊だから問題ない」
という風に考えたのかもしれませんが、実戦の展開の通り先手が優勢となっています。
形勢が大きく動いた局面は何かしら悪手があった可能性が高く、その悪手は大局観の悪さや読み抜けなどすぐに改善しやすいものが多いです。
今回は△3五歩に対して▲4六歩から▲5四銀、▲6五桂の筋のうっかり、もしくはその後の△4六桂から進めた局面での大局観の悪さが形勢が大きく動いています。
なので▲4六歩から捌く筋があるというのを認識しておくことと、玉の堅さを過信しすぎず、駒の効率が悪くないかというのも考えておくことで次の対局に反省を生かせます。
形勢が大きく動いた局面の反省こそ1番の上達への近道
終盤の反省
終盤の反省についてはさらっと敗着を特定する程度でいいです。
アマチュアの終盤は大体は30秒将棋なので、読み抜け、詰み逃しなどのオンパレードでミスだらけです。
細かく検討していくとキリがないので、大きなミスをいくつか確認したらそれで終盤の反省は十分だと思います。
反省にかける時間や反省のタイミングについて
これで1局の将棋の反省の仕方の流れは終わりですが、この反省は対局にかけた時間より短い時間でやるようにしましょう。
たとえば将棋倶楽部24で1局に20分かけたとしたら、反省は3~10分くらいでいいです。
やはり対局が一番質の高い集中した読みを入れることができるので、最短の上達を目指すなら対局時間を増やすべきです。
また、反省をするタイミングは対局直後が1番いいです。
時間を置いてしまうと対局中に考えていたことなどを忘れてしまうので、ネット将棋の場合は対局が終わったらすぐ反省するぐらいの気持ちでいいと思います。
大会とか、諸事情ですぐに反省できない場合には対局中に気になったことなどをメモして後日確認をするのがいいでしょう。
反省は対局直後にせよ!
まとめ
実際の棋譜を使って効率の良い対局の反省方法の紹介でした。
最後に反省で気をつけてほしいことをまとめて終わりにしたいと思います。
- 対局後全く反省しないのはだめ
- 反省に時間をかけすぎるのも良くない
- 序盤、終盤の反省に時間をかけすぎない
- 仕掛けの局面に一番時間をかける
- できる限り対局直後に反省する
うまく反省ができるようになれば、指せば指すだけ強くなる状態になるのでメキメキと棋力が上がっていくと思います。
ぜひ実践してみてください!