古くから伝わる将棋の格言は、覚えるだけで将棋が強くなるくらい効果のあるものもあれば、時代が経ちすぎて全然使えなくなった格言もあります。
そこで今回は初心者にも役に立つ格言と役に立たない格言をそれぞれランキング形式で紹介していこうと思います。
使える格言はしっかりと覚えて実戦に生かしていただき、使えない格言はなぜ使えないのかという理由を覚えて、格言に惑わされないように注意しましょう!
Contents
将棋の役立つ格言ランキング5位~1位
それでは早速役立つ格言のほうからみていきましょう。
役立つ格言については、自分の実戦で応用できるように実際の局面を用いて紹介していきます。
5位 開戦は歩の突き捨てから
将棋で1番の考えどころは序盤戦でお互い囲いを完成させ、いざ中盤戦へ入る最初の仕掛けの段階です。
仕掛け方には色々ありますが、まずは歩の突き捨てから始めようというのがこの格言の教えです。
例題として以下の局面はみてみましょう。
後手の居飛車側としては、金銀がバラバラではあるものの、玉の遠さで振り飛車側より上回っているのでこのまま仕掛けたいところです。
仕掛ける筋は△8六歩▲同歩△同角▲8八飛△7七角成と直線的にいく筋があるのですが、この仕掛けを決行する前に△5五歩と突くのが格言通りの好手です。
△5五歩に▲同角は△8六歩から8筋を突破されてしまうので、▲同歩と取るしかないですが、5筋に歩が利くようになったのが大きいです。
実戦は狙い通り△8六歩から仕掛け、ちょっと進んで以下の局面になりました。
この局面で△5六歩と打てるのが先に△5五歩と突き捨てておいた効果で、▲同銀なら△6六馬が王手銀取りになります。
実戦は▲4八銀と引きましたが、△6五桂と味の良い桂馬の活用をし、5筋の拠点を生かして後手が快勝しました。
もし△5五歩と突き捨てておかないで、上の局面で△5五歩としたとしても、今度は▲同歩と取らずに▲9一竜のような手で放置されたことでしょう。
仕掛けの前の歩の突き捨てというのは初心者には難しい技術なのですが、うまく使いこなせば強力な武器になります。
なのでプロの将棋を並べて自分の実戦でも応用することができないか、仕掛けの局面をよく観察することをおすすめします。
4位 角交換将棋に5筋は突くな
初心者にとって角換わりや角交換振り飛車といった角をお互い持ち合った戦型は、角を打ち込まれないようにバランスを取るのが難しいという理由で嫌われがちです。
そんな角交換系の戦型が嫌いな人には、「角交換将棋に5筋は突くな」という格言を覚えていただければと思います。
例えばこの局面はまだ駒もぶつかっていない1局の将棋に見えますが、実はすでに後手が作戦勝ちをしています。
その理由が角交換将棋に5筋を突くなの格言に先手が反しているからです。
例えば上の局面から▲4六銀と攻めていこうとすると△6五歩と仕掛けられ、▲同歩△同桂の局面は先手がかなり困っています。
▲6六銀と桂取りに銀を逃がすと、△3九角と打たれて飛車銀両取りを喰らいます。
というわけで角交換将棋で5筋を突くのは、
- △3九角の打ち込みが飛車取り+4八、5七、6六、7五、8四のラインまで利くので受けが難しい
- 上の△3九角の打ち込みと合わせて△7三桂から△6五歩の仕掛けが厳しい
この2つの攻め筋があるので避けましょうというのが「角交換将棋に5筋は突くな」という格言の教えです。
角交換振り飛車の中では5筋の歩を突く定跡もありますが、指しこなすのが難しいです。
また相居飛車では5筋を突くことはほとんどないので、初心者のうちは角交換したら5筋を突くのは読みから外してもいいくらいかもしれません。
3位 居玉は避けよ
現代のプロ将棋では相居飛車でお互い居玉のまま仕掛ける展開もよくありますが、初心者のうちは玉を囲うほうがいいです。
特に居玉といって、玉を1回も動かさずに初期配置のまま置いておくのは非常に危険なので「居玉は避けよ」という格言通り1回は玉を動かすようにしましょう。
例えばこの局面は居玉のまま銀を繰り出して攻めた局面ですが、後手に△4五歩と反撃されてすでに先手の仕掛けが失敗しています。
このまま何もしないと△8八角成から△5五角と飛車銀両取りを喰らってしまいますし、▲6六歩と角交換を避けても△5五角からどんどん攻められてしまいます。
5筋というのは将棋盤の真ん中でもあるので、左半分、右半分どちらで戦いが起こっても戦場に近いうちに玉がいるということになります。
一方後手は玉を2回動かしただけですが、右半分で戦いが起きたとしても戦場に遠いのでそこまで危険ではありません。
そういうわけで初心者のうちは玉は1回は動かして居玉を避けるということを覚えておきましょう。
2位 玉は下段に落とせ
相手の玉を寄せるときは将棋盤の下のほうに追い詰めるようにせよというのがこの格言の意味です。
例としてちょっと難しいですが、広瀬先生と羽生先生の竜王戦の将棋を紹介します。
先手の広瀬先生が▲8四桂と打って攻めを防いだところです。
形勢は駒得で手番も握っている後手の羽生先生が優勢ですが、どう決めるか方針が難しいところです。
実戦は△7六歩▲6八銀△8七歩成▲同玉△6九角▲7八歩△8五飛打と下から追う攻め方をしましたが、玉を中段に逃がしてしまったため寄せるのが難しい展開になってしまいました。
玉は下段に落とせという格言以外にも「中段玉は寄せにくし」というのもあり、玉は上ではなく下へ落とすように攻めないと寄せるのが大変ということですね。
自分の実戦でも玉を上に逃してしまう寄せをしないように注意しましょう。
1位 一歩千金
1位は一歩千金という歩の大事さを教える格言です。
同じような格言に「歩のない将棋は負け将棋」というのもあり、将棋の駒の中で最弱な歩でも1歩ないだけに負けになってしまうということも将棋ではよくあります。
例として「一歩竜王」と呼ばれる有名な1局を紹介します。
これは2000年の竜王戦第7局、先手藤井猛先生、後手羽生先生の1局です。
局面は先手優勢で、あと一歩でもあれば▲2四歩から詰みなのですが、先手は歩切れです。
なので▲2五桂や▲4三銀不成と攻める手を考えるところですが、△3七竜から△4五桂や△3九銀と打つとん死筋があって危険です。
先手困ったかに思われましたが、実戦は▲8六歩というこの忙しい終盤戦にただ歩を取っただけの決め手を指しました。
先手玉に詰みはなく、▲2四歩からの3手詰めがある後手は仕方なく△1ニ玉と早逃げしましたが、構わず▲2四歩と垂らして以下数手で先手勝ち、藤井先生が竜王を防衛を決めます。
もし8六に歩が落ちていなければ勝敗が変わったかもしれないと思うと、一歩の力はやはりバカにできません。
最弱の駒だろうと勝敗を変える力を持っているので、歩は大事に扱いましょう。
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将棋の役に立たない格言ランキング5位~1位
次は使えない格言ランキングを紹介します。
5位 横歩3年の患い
横歩を取ると元の位置に飛車を戻るのに3手かかるので横歩を取ってはいけないという意味の格言です。

ここから▲3四飛と取ると、▲3六飛~▲2六飛と3手かかってしまうという意味合いですね。
昔はこの格言に従って横歩を取らなかったようですが、今は▲3四飛と歩を取って先手が指せるという結論になりつつあります。
この形以外にも一歩損するけどその分手得をするという指し方はプロでもたまに指されますが、手得対歩得は大体の場合歩得のほうが大きいです。
とりわけ初心者のうちは手得を生かす技術は習得が難しいので、実利のほうを大事にするようにしましょう。
4位 手のない時は端歩を突け
指し手に困った時や、パスしたいような局面では端歩を突いて様子見をせよという教えですが、スピード感が大事な現代将棋では無意味な端歩突きは致命傷になることが多々あります。
それに手に困って端歩を突いても、相手に突き返されたらまた指し手に困ることになるので、根本的な解決に至りません。
端歩突きの有無は形勢に大きな影響を与える場合もあるので、自分にとって端歩の交換が入るのは得なのかどうかというのも考えて指すようにしましょう。
3位 三桂あって詰まぬ事なし
格言の中で1番の大嘘がこの格言です。
桂馬が3枚持ち駒にないから詰まないという局面はほとんどなく、むしろ桂馬が持ち駒に3つあるときは不利な局面のほうが多い気がします。
桂馬が持ち駒にあるのは自分の囲いの金銀を相手の桂馬で攻められたときに入るというパターンが多いので。
なので桂馬が3枚あるからと言って相手の玉は必ず詰むはずだと、考え過ぎないように注意しましょう。
三桂持って詰まぬ事なしは計算(桂三)あって詰まぬ事なしをひっくり返したギャグという説もあります。
2位 5五の位は天王山
昔の時代は5五の位が取れたらそれだけで勝ちになると考えられていたくらい5五の地点に対する意識が高く、▲5六歩と突かれたら△5四歩と突き返している将棋が多いです。
大山先生が振り飛車で無敵を誇っていた時代には四間飛車対策として5筋位取りという指し方が流行りましたが、現代では全く指されません。

5筋位取りに限らず位を取る将棋は指しこなすのが大変で、玉が薄くなりがちなのでプロにもアマチュアにも好まれません。
なので初心者の方はなおさら5五の位を取ることにこだわってはいけません。
1位 序盤戦は飛車より角
もっともらしい使えそうな格言に見えますが、将棋は基本的に飛車のほうが強いので、「序盤戦でも角より飛車」というのが正しいです。

例えば上図は横歩取り△2三歩と呼ばれる戦法ですが、▲3ニ飛成といきなり飛車金交換をして先手良しというのが定跡の結論です。
一方▲3六飛として飛車と角歩交換にする指し方もありますが、意外と先手を持って2枚角でバランスを取るのは大変です。
飛車を打ち込まれて暴れられると大体負けてしまうので、金銀を左右に配置して飛車の打ち込みを警戒しないといけない大変さもあります。
1歩得という好条件でもなかなか大変なので、単なる飛車角交換ではほとんどの場合が飛車側有利です。
そのため序盤戦だからといって、積極的に飛車で角を取りに行くようなことはしないように気をつけましょう。
まあ初心者も上級者もみんな角より飛車のほうが好きな人が多いので、大丈夫だとは思いますが・・・w
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個人的に好きな格言について
初心者に役立つ格言と役立たない格言をそれぞれ10個紹介しましたが、ここからは個人的に好きな格言を紹介していきます。
4枚の攻めは切れない
1番好きな格言はこれです。
将棋は3枚の攻めは切れることが多いのですが、4枚の攻めはなかなか切れません。
なので思い切った攻めをするときも、4枚なのか3枚なのかを確認して4枚なら攻めるということが多いです。
無理攻めをすることが多い自分の棋風的に、4枚なら切れないという目安は非常に役立っています。
長い詰みより短い必死
詰ましに言っても必死をかけても勝ちという局面では私は必死をかけることが多いです。
もちろん棋譜の芸術的な観点から言えば詰ましにいくほうがいいですし、プロで言えば谷川先生とかはそのタイプです。
でも長い詰みは読み抜けをして詰まし損ねて負けるリスクもあるので、それなら確実に勝てる短い必死を選ぶほうがいいかなと思っています。
詰みのある局面で詰ましにいかないという罪悪感を感じることもありますが、心の中で(長い詰みより短い必死だから・・・)と唱えると楽になりますw
堅い、攻めてる、切れない=勝ち
これを将棋の格言というかは微妙なところですが、好きなフレーズです。
特に居飛車穴熊対振り飛車で穴熊側を持ってこのパターンになることが多いですね。
自分の玉は手付かずの穴熊、そして自分は攻めて相手は受けている、その攻めは切れることがない。
現代では薄い玉で攻め合い勝ちしなくてはいけないことが増えましたが、やっぱり理想的な勝ち方は「堅い、攻めてる、切れない」ですね。
どんなに強い人だろうとこのパターンに持ち込まれると惨めな負け方になってしまいますし、勝つ側は爽快感のある勝ち方ができます。
将棋は自玉を見ずに攻めることだけ考えることほど幸せなことはないですからねえ・・・。
まとめ
将棋の格言は多くの場合が役に立ちますし、暗記を推奨するレベルのものもありますが、1部役に立たないのもあります。
終盤や寄せに関する格言はほぼ役に立つものしかなく、逆に序盤に関する格言は疑ってかかったほうがいいかもしれません。
自分の実戦で格言通りの手を指せるようになると結果も出やすくなりますし、初心者の人は格言を覚えるという勉強法もおすすめです!